歯科医が「予防」を叫ぶようになって久しい。
予防歯科の大切さを一般の人にも広めたいと活動する会社もある。
歯科医ができていないことを他業種に手伝ってもらうのは恥ずかしい話だが、ありあたいことではある。
年賀状をいただくと、ずいぶん多くの歯科関係者がこのブログを楽しみにしてくれているのが分かる。
今後は関係者向けにもお話をしていこうと思う。
今日は一般の方向けに予防歯科というものについて簡単にお話したい。
少し前だが、日本の予防歯科の先駆けと評される大学教授のお話しをうかがった。
彼が話すには、予防歯科には2つの考えがあるという。
一つは病気自体にかからないようにするという予防。
虫歯にかからない、歯周病にかからないというのがそれだ。
もうひとつは病気にかかる人を少しでも減らしたり、かかった人の症状を少しでも軽くするというもの。
虫歯にはかかるが数や程度が少なくできるとか、歯周病にはかかるが進行を遅らせるとか。
彼は予防歯科というものはこの後者にあたるものと話しておられた。
もちろん誰が考えても前者がよいに決まっている。
そのような予防が本来あるべき予防だという意見に反対する人はいない。
しかし、おそらく歯医者のほとんどは、予防歯科を後者としてとらえている。
大学教授がそう教えるならそうとらえる歯医者ばかりなのは当然だ。
そもそも虫歯や歯周病は、歯医者にとっては治らない病気だ。
一度虫歯になった歯の寿命は長くて40年が歯医者の常識だ。
つまり、6歳で虫歯になってレジン充填した永久歯は、46歳で抜歯になるということだ。
歯周病は、学会のコンセンサスレポートに治癒ではなく病状安定がゴールと書かれているくらいだから、どんな名医にかかっても治らないものというのが歯医者の常識だ。
熱心に歯ブラシをしても、歯周病の手術を受けてもやがて歯は抜けてしまう。
虫歯も歯周病も歯医者さんからすれば、治せない病気ではなく、治らない病気なのだ。
私が歯学部の学生のころ、お世話になった柔道部の世話役の高名な教授は私にこう言った。
「吉見君、歯医者仕事の総仕上げは立派な総義歯を作ることだよ。」
つまり、どんなにいろいろな治療をしても患者さんは最後に入れ歯を入れてもらうことになるということ。
歯科医が患者さんにしてあげられることの最後は、総入れ歯を作ることと言うわけだ。
翻って患者さんはどう思っているだろう。
虫歯や歯周病が治らない病気だと思っているだろうか。
虫歯予防に予防歯科に通ったら虫歯にならないと思っているのではないか。
歯周病予防に予防歯科に通っているなら、自分が歯周病を将来悪化させることはないと思っているのではないか。
歯医者さんがもし予防をうたうなら、まずは自分の歯科治療の力量を正直に患者さんへ伝えるべきではないか。
虫歯治療の実績や歯周療法の実績、虫歯や歯周病に対する自らの考え方や取り組み方、経過が悪かった場合の責任の取り方。
どこまでできてどこからできないのか。
おそらくその客観的な指標すら持ち合わせていない歯医者がほとんどではないのか。
虫歯や歯周病が治せない歯医者が、どうして効果的な虫歯や歯周病の予防ができるのだろう。
やればよいというわけではない。
素人がやる肩もみと、医師や柔整師がやる肩の治療が同じではあるまい。
今でもPMTCが歯周病予防だと思っている歯医者や衛生士がいる。
今日もせっせと患者さんにそう話してPMTCをやっているのだろう。
それが日本だけの常識だとも知らずに。
これからはブログやセミナーを通じて、心ある医療人を目指す人に、少しでも正しい医療情報が提供できたら良いと思う。
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